札幌市内福祉施設職員国内派遣研修報告〔平成22年度〕
先駆的な取り組みに多くを学ぶ
本会では、札幌市内の民間社会福祉施設に勤務する中堅職員の資質向上を目的とした国内での研修について、共同募金会配分金等を活用し、費用の一部を助成しています。
平成22年度は、7名の社会福祉施設職員の皆さんが、先進的活動の視察・見学や研修会に参加しました。その研修報告をご紹介します。
☆障がい者支援施設 グリンハイム 介護主任 熊谷 美幸さん
☆ノビロ青年の家 生活支援員 舘山 央弥さん
☆救護施設 札幌明啓院 就労支援相談員 金子 諭さん
☆母子生活支援施設 すずらん 保育士 瀧本 純子さん
☆特別養護老人ホーム 厚別栄和荘 生活相談員 中野 升さん
☆札幌南清田保育園 園長 菅井 知子さん
☆児童養護施設 興正学園 保育士 中島 恵美
重度障害者施設での個別支援の取り組みと実践
障がい者支援施設 グリンハイム 介護主任 熊谷 美幸
私はこのたび仙台市内の、社会福祉法人「ありのまま舎」の重度障害者難病ホスピス「太白ありのまま舎」にて、施設見学をさせていただきました。
今年度グリンハイムの改築移転に伴い、ユニットケア体制に移行するに当たり、個別支援のプログラムや人員配置と勤務体制の取り組み、また、ケアスタッフの医療的ケアを先進的に取り組まれている施設ということで研修させていただきました。
研修では施設の概要と施設内の見学、施設の歴史とホスピス建設のお話を聞かせていただきました。施設の特徴としている進行する病を持つ難病患者が、初期医療と精神的ケアを受けて、自分の生活を送ることができるホスピスの理念での取り組みには、大変感銘を受けました。プライバシーを尊重するということから、60床全室個室で個室内に酸素と吸引の設備があり、重度の障害の方でもショートステイの利用が、可能な体制を整えていました。
個別支援のプログラムの作成では利用者がどんな生活を望み、何を行いたいのかを先ずケアスタッフが利用者と共に自由に表現し、絵や写真が添付された物もあり利用者の嗜好や人柄や思いが表れていました。また作成にあたってのマニュアルが詳しくあり、とても参考になりました。
日常のプログラムの中で、食事と入浴の時間は決められていましたが、他の生活スケジュールは、利用者の希望時間にケアスタッフが個室訪問して行われていました。勤務体制は4つのユニットの各リーダーを中心に同性介助を基本として1グループ3~5名で稼働していました。所属するユニットに限らず、必要時には他のユニットのフォローにも入る体制作りをしているとの事でした。
ケアスタッフの医療行為についての取り組みは、施設の創設時からの課題でもあったため明確化されていました。ケアスタッフが医療的ケアを実施するに当たり、利用者本人及び家族の了承を得て書面化されていました。ケアスタッフが実習を行うに当たり医療的ケアの難易度、スタッフの経験を考慮した上で、メディカルスタッフから指導を受ける回数や指導スタッフの研修の手順、施設としてのホスピスケアの考えがマニュアル化されていました。利用者や家族の医療的ケアの承諾書の署名を行われてから施設からの指示書が出てケアを行うまでの密なマニュアルはとても参考になりました。
このたび派遣先の職員の皆様にお忙しい中、貴重なお話とアドバイスを聞かせていただき大変勉強になりました。このような機会を頂きありがとうございました。
自立支援法の移行と重度・高齢化する利用者の支援について考える
ノビロ青年の家 生活支援員 舘山 央弥
私はこのたび、「札幌市内福祉施設職員国内派遣研修」において、神奈川県横浜市にある「社会福祉法人 朝日の里」を見学実習させていただきました。
私の勤務する施設同様、介護度の高い方々が多く、支援者は生活・活動に重点を置き日々切磋琢磨し、また手厚い支援が実施されている印象を受けました。また、平成20年に自立支援法へ移行したとの事で、今後「生活介護」の移行を進めていく私たちにとって貴重な意見もいただけました。
職員のみなさんは利用者個々との日常的な支援・関わりのみならず、記録や意見交換等からも個別のニーズや課題を的確に捉えていると思いました。多忙な勤務状況や環境整備等のハード面を課題としながらも職員の育成や記録物の簡素化(ソフトの導入・作成)、勉強会などマンパワーで出来ることを積極的に取り組んでいると感じました。また、若い職員もそれぞれ責任を持って利用者と「向き合う姿勢」が随所に見られました。
日中活動においては陶芸やフラワーアレンジメントを始め、講師を招いた茶道教室も行っており利用者の余暇的創作活動に注力しています。廊下などに展示されている作品には利用者の方々が楽しみながら一生懸命取り組んでいる様子が伺えました。農園芸や歩行訓練など身体を動かす活動とバランスを図りながら利用者のニーズに忠実に応えていくというのは本当に大変なことだと思います。ただ、今後はこれまでの活動をベースに、より一層利用者の能力や活動との適合性を吟味し幅を広げた活動内容の展開を考えているということで、これから新しい形の朝日塾が作られていくことと思います。
生活及び活動において障害特性だけではなく身体的な支援や医療との密接な繋がりも重要性を増す中、生活の質や将来的な展望、保護者へのアプローチも含め、より良い環境と支援を提供していくことに正面から取り組んでいる姿に感銘を受けました。
移行に向けて課題は多く点在しますが、朝日塾持ち前のチームワークの良さとゆったりとした生活スタイルを見習い、参考にしていきたいと思います。お忙しい中大変ありがとうございました。
また、このような機会をいただき感謝致します。
救護施設の居宅生活訓練について学ぶ
救護施設 札幌明啓院 就労支援相談員 金子 諭
平成22年7月22日、23日の2日間、大阪府高槻市にある救護施設高槻温心寮で、居宅生活訓練事業について見学研修させていただきました。
ここ数年、札幌明啓院では、ホームレス救護施設就労支援入所事業などの関係や、通過施設としての役割の高まりから、居宅へ移行する利用者が増えてきました。しかし、その中で居宅生活に適応できない方も目立ち始め対応が課題となってきました。この対応の選択肢として居宅生活訓練事業を検討する必要性が出てきたため、今回高槻温心寮での居宅生活訓練事業研修を依頼する運びとなりました。
救護施設高槻温心寮は定員200名の大きな施設ながら、閑静な住宅街に調和するような佇まいの施設でした。
この中で居宅生活訓練に使用されている部屋は、徒歩で10分弱の場所に3LDKのマンションタイプ1部屋、以前の職員宿舎に3部屋、施設内に居宅訓練用として1部屋を利用していました。現在3名の方が訓練中で(最大5名)、対応する職員は専属者1名、兼任職員2名という配置でした。
訓練には、施設内で募集要項を掲示し、応募者の中から参加者を決めるとのことでした。訓練は個別の支援計画に基づき進められ、1月ごとの振り返り、半年ごとの判定会議を経て最終的に居宅への移行が決まった段階で実施機関や、病院、地域の支援者による移行会議が開かれ、居宅へ移行するとのことでした。実際に夕食の準備を見せて頂いたり、交流会に参加させてもらい、利用者の声も聞くことができました。また、訓練事業の他、通所事業やグループホームなども見学し、複合的な支援の必要性も学びました。
研修を通じ、日中活動の充実など具体的な課題も見えてきて、今後に活かせる充実した研修となりました。
最後に、施設長をはじめ総主任、各職種の担当職員の方、2日間に渡りお忙しい中、また連日の猛暑の中、時間を割いて頂き、丁寧なご説明やご案内を頂きましたことをお礼を申し上げます。
「子ども虐待防止と周産期の支援」について学ぶ
母子生活支援施設 北海道社会福祉事業会 すずらん 保育士 瀧本 純子
平成23年3月2日から3月4日の3日間、子どもの虹情報センター テーマ別研修「子ども虐待防止と周産期の支援」に参加させて頂きました。
周産期またはそれ以前のハイリスク家庭に対し、深い関わりを持つことで、虐待を未然に防ぐことを知ることができました。保健センター、病院などのネットワークがとても重要で、各機関の努力を感じました。それらの細かな網の目をくぐり抜けてしまい、保健センターからの繋がり等で、私たち母子生活支援施設の役割が発生します。このネットワークがすべての自治体に徹底されはいないと思いますが、痛ましい虐待ニュースや自分たちが抱えているハイリスクな家庭を考えますと、思いは一つです。
今回の研修で一番印象に残っている言葉は「自分一人では何もできない 今までの自分を180°変えて、協力してもらいました」です。どんなに良いシステムやマニュアルがあっても一つの機関で行うのと各機関が繋がって協力するのとは、雲泥の差であり、切れ目のない支援が大切なのです。
また、北海道の母子生活支施設が何年もかけて学んできた愛着が、他機関でも重要視されていることを知ることができました。ハイリスク家庭に対して、各機関が協力し合い親子の愛着形成の支援を行うことで、確実に虐待が軽減されるのです。
自分たちにまず何ができるか考えますと、母子の愛着を付けること、性教育を母と共に行うこと、職員と子どもたちとの愛着形成、他機関との連携を図ることです。今まで取り組んできたことですが、こうして今回の研修に行かせて頂くことで再確認し、新たに気付かされたことも多かったです。「本当に支援が必要な方々は不安を口に出さない」という意見が各機関共通して出ていました。まずは信頼されるように、子どもからは温かみを感じられる職員になりたいです。このような研修機会を与えていただきありがとうございました。
施設における職員の教育方法、人材育成について
特別養護老人ホーム 厚別栄和荘 生活相談員 中野 升
兵庫県たつの市にある社会福祉法人桑の実園福祉会が運営する特別養護老人ホーム桑の実園を見学させていただき、職員の教育、人材育成についてというテーマを中心に多く学ぶことが出来ました。
まずは、法人の基本理念の浸透化を重視しているという姿勢がありました。そのため、明確に施設の方向性が決められていることで職員の意識の統一に繋がると思われます。
管理職に対してもマネジメント力を養う教育を実施しているという体制であり、教育の方法はマニュアル化されており、1つひとつ段階を追って、教育していく方法をとっておりました。その方法であれば、管理職においても1人ひとりがどこの部分が弱点なのか明確にもでき、重点的にその部分を強化できるというメリットがあると思いました。管理職の教育は重要であり、その能力によって一般の職員の成長に違いが出てくるとも思われます。
一般職員に対しての研修や教育についてもシステム化され明確に実施されておりました。研修は、初級、中級、上級の経験年数に応じて分かれ、初級研修は中級対象の職員が担当し、中級研修は上級対象職員が担当するなど、あくまで職員全員による研修方法をとっておりました。また、職員が外部の研修に参加した際には、伝達研修を実施し、伝達研修を行うことで、外部研修に参加した職員は自分が研修を行い他の職員に教えることになるため、きちんと内容まで理解をする機会になるなど、研修が有意義なものになる方法もとっておりました。
人事考課制度も導入し、職員1人ひとりの年間目標の研修計画作成にも努めているとのことで、その把握だけでも十分な教育方法になっていると思います。各職員が退勤前に総主任のところに寄り、1日の振り返りをし、総主任からアドバイスをもらって退勤をするという方法も実施されており、質の向上や意識付けに結びついていると感じました。
このたびの施設見学により、施設のサービスの質を上げる方法の一つとしての職員の教育方法や人材育成について勉強になりました。管理職から新人職員までの教育体制が定型化されているシステムが大切ではないかと思い、当施設でもこのシステムを参考にさせていただき、今後の職員教育や人材育成に力を入れ、サービスの質の向上につなげていきたいと思います。
今回は、このような機会をいただき、本当にありがとうございました。より高いサービスの質の向上を目指していきたいと思います。
日本の保育の方向性とは…
札幌南清田保育園 園長 菅井 知子
私は平成23年2月2日~4日に大阪市で開催されました第36回保育総合研修会・テーマ「どうする日本の子育ち・・・主体者として育ち合うために」に参加させていただきました。
初日は情勢報告「保育行政の動向と課題」ということで、保育の質の向上と量の拡大の必要性から、今、政府が制度改革を行おうとしていることや幼保一元化の意義について厚生労働省の方から説明がありました。この報告に続いて、保育三団体と私立幼稚園団体の代表者によるシンポジウム「いま、子ども・子育て新システムに求められるもの」が行われました。政府が提案する新システムについて其々の立場からの発言があり、その中で『新システムは現場からの発案ではなく政府主導となっている』、『報道に踊らされないように気をつけなければいけない』、『なんといっても子どもに不利益があってはならない』という言葉が印象的でした。『私たちの責任で、“私たちはどうしたいのか?どうするのか?”を考えていかなければならないでしょう。』という総括の言葉に、保育に携る者としての責任の重さを改めて感じたしだいです。
二日目の分科会「世界の乳幼児期の保育・教育はいま何に関心が集まっているのか-海外研修10年の振り返り」では、オーストラリア、ドイツ、アメリカ、ニュージーランド、フィンランド、フランス、イギリス、スウェーデンの保育・教育についての報告の後、グループ討議を交えながら『保育にとって大切なこと、大切にしたいこと』、そして『日本の保育の良さ』について、考えていきました。最終日の記念講演では、「子どもを『見る』」と「子どもが『見える』」の違いについて、奥深い話を聴くことができました。
研修を通して、「ひとりひとりを大切に」がキーワードであることを再確認し、制度改革に惑わされることなく、自分の理論を自覚しながら保育を行っていきたいと思いました。
乳児期の心の育ち
児童養護施設 興正学園 保育士 中島 恵美
私はこの度8月21日~22日にかけて、東京都で開催された『乳幼児のための保育看護セミナー』に参加させていただきました。
主な研修の内容は、乳児(0、1歳児)の心身の発達について、環境、保健、愛着、虐待と様々な方面からテーマに沿って講義して頂くものでした。参加しているほとんどの方が乳児院に勤めておられ、乳児院で生活している子どもたちの心身の発達にすり合わせた形ですすめられていました。
生後3ヶ月の赤ちゃんが、頼っている人の感情を見抜き反応する力がある、例として母親が疲れている時にあやすと顔をそらせたり、この頃の関わりとして目を合わせてじっとみる等のゆったりとした時間を過ごすのが良い、強い刺激ばかりの関わりだと、それに反応し後に行動障がいになる可能性がある等の話が印象に残りました。
乳児期の子どもの繊細な心の話を受け、日常の関わりを振り返るとともに、学んだ事を心に留めて関わっていき、子どもたちが心身共に健やかに育っていけるよう支援していきたいと思いました。
要求を自分で伝えることができない生まれたばかりの子どもを理解する事や、生後3ヶ月~7ヶ月頃のまだ言葉でのやりとりができない子どもに、目を合わせて丁寧に返事をする、問いかける、遊びを広げるといった質の良い応答的な関わりが、1歳頃に感じられる自我の芽生えやその後の子どもの発達に大きな影響を与えることを改めて学びました。私が子どもたちに関わることで子どもたちの成長や将来にどれだけの影響を与えるのかという重みと責任を改めて感じる機会となりました。
今回、主に乳児期に関する内容の講義でしたが、乳児についての知識を深めるだけではなく、日々の自分自身の関わりを振り返る機会となったことや、乳児に関わらず、子どもと関わっていく上で大切なことを学ぶことができ、今後に活かしていけるよう努力していきたいと思っています。
このような研修の機会を与えて頂きまして深く感謝申し上げます。


